ゲーミング英会話は大人にも効果的?TOEIC・英検・日常会話への影響も解説
「ゲーミング英会話」は、オンラインゲームをプレイしながら外国人講師と英語でコミュニケーションを取る、子ども向けサービスとして広まってきた学習法ですが、「大人でも使えるのか」「実際に英語力は伸びるのか」「TOEICや英検対策になるのか」と疑問に思う方も多いはずです。
ゲーミング英会話の仕組みなどから、第二言語習得(SLA)研究の知見をもとに、大人の学習者への効果を語彙力・スピーキング・資格試験・日常会話の観点から検証します。
ゲーミング英会話とは?
ゲーミング英会話は、マインクラフト・フォートナイト・あつまれ どうぶつの森などのオンラインゲームをプレイしながら、外国人講師とマンツーマンで英語のやり取りを行うオンライン英会話の一つです。
テキストを使った従来型の英会話レッスンとは違って、ゲームの目的(クリアする、資源を集める、作戦を立てるなど)を英語で講師と共有しながらすすめるのが特徴です。
多くのサービスは「講師との挨拶・簡単な英会話 → ゲームプレイ → レッスンで使った表現の振り返り」という流れでレッスンを構成しており、遊びの中で自然に英語表現に触れることを狙いとしています。もともとは子ども向けに開発されたサービスが中心ですが、近年は年齢を問わず受講できるサービスも登場しています。
大人でも利用できるの?
多くのゲーミング英会話サービスは年齢制限を設けておらず、大人も受講できます。実際、社会人経験のあるバイリンガル講師が指導にあたるサービスや、ビジネスパーソン向けに設計されたコースを持つサービスもあります。
ただし、サービスの多くはもともと子ども・小学生向けに設計されているため、大人が受講する場合は次の点を確認しておくとよいでしょう。
対応しているゲームタイトルが自分の興味と合っているのか?、レッスンの目的が「試験対策」「ビジネス英語」など自分のニーズに合っているのか?講師が大人の指導経験を持っているのか?などです。
大人の英語学習に効果はあるのか?学術研究から検証する
ゲーミング英会話という商業サービスそのものを対象にした査読付き研究はまだ少ないのが実情ですから、より広い意味で、「デジタルゲームを通じた第二言語学習(Digital Game-Based Language Learning)」に関する学術研究をもとに、ゲームを使った英語学習が大人にどのような効果をもたらしうるかを検証します。
語彙力・リスニング力への効果
スウェーデンの研究者Sundqvist氏とSylven氏は、ゲームプレイ時間と英語の語彙力・リスニング力・読解力との関係を継続的に調査しています。
彼らの研究では、週5時間以上ゲームをプレイする学習者は、プレイしない学習者や軽度のプレイヤーよりも語彙テストの得点が高いという結果が繰り返し確認されています。
ゲームプレイ時間の多さは、学習者の家庭環境などの背景要因を統制しても、語彙・リスニングスコアと正の相関を示すことが報告されています。
後続の研究でも、頻繁にゲームをプレイする学習者は、プレイしない学習者に比べてあらゆる頻度帯の語彙、特に上級語彙のスコアが高いことが確認されており、質的な分析でも商業用ゲームのプレイが第二言語の語彙習得にプラスに働くことが裏付けられています。
一方で、こうした効果は「大量かつ継続的なプレイ」を前提とした相関研究であり、因果関係を断定するものではない点や、学期末の試験の得点や成績そのものへの影響は弱い、あるいは有意でなかったとする研究もある点には注意が必要です。
話す意欲への効果
大人の学習者に関する示唆が特に大きいのが、Reinders氏とWattana氏によるタイの大学生を対象とした一連の研究です。
ゲームベースの英語学習プログラムに参加した大学生を対象にしたインタビュー調査では、ゲームプレイが学習者の「話しかけてみよう」という心理的ハードルを下げ、英語で発言する意欲(Willingness to Communicate)を高める傾向が確認されています。
ゲームには、学習者のコミュニケーション不安を和らげ、外国語での対話を促す効果があると指摘されています。
同じ研究グループによる別の調査では、ゲームプレイを取り入れた授業のほうが、通常の教室での英語でのやり取りよりも、使用される会話表現の種類が多く、発言回数自体も多くなったことが報告されています。これは、間違いを恐れずに発言できる「非脅威的な環境」としてゲームが機能している可能性を示すものです。
これらの研究の対象者は大学生(成人学習者)であり、「ゲームを使った学習は子どもだけのものではなく、大人にも心理面での効果が期待できる」ことを示す根拠として参考になります。
理論的な裏付け:インプット仮説と情意フィルター仮説
言語学者スティーヴン・クラッシェンが提唱した第二言語習得理論の中に、「情意フィルター仮説」があります。これは、学習者が不安や緊張を感じている状態では、たとえ理解可能なインプット(言語情報)を受け取っても、それが習得に結びつきにくくなるという考え方です。クラッシェンは、習得は学習者の気分に大きく依存し、ストレスにさらされていたり学習意欲を持てなかったりすると、習得が著しく阻害されるとしています。
ゲームという「遊び」の文脈は、この情意フィルターを下げやすい環境だと考えられており、これが上記のWillingness to Communicateに関する研究結果とも整合的です。
TOEIC・英検対策としての効果はあるのか?
ゲーミング英会話やゲームベース学習が、TOEICや英検のスコアを直接的に押し上げるという専門的なエビデンス(査読付き研究)は、十分にありません。
これまで紹介した研究が示しているのは、あくまで「語彙力」「リスニング力」「発話意欲」といった英語力の土台部分への効果であり、これらはTOEICのリスニングセクションや英検の語彙問題・面接(スピーキング)と重なる部分です。実際、一部のゲーミング英会話サービスは英検対応のカリキュラムを用意しており、語彙・リスニング面での親和性を意識した設計がされています。
一方で、学期末試験の得点や学校の成績への影響については「有意な差が見られなかった、あるいは効果量が小さかった」とする研究結果もあり、ゲームプレイの頻度と学業成績(試験の点数)との関係は、語彙テストほど強くはないことが指摘されています。
つまり、ゲーミング英会話だけでTOEIC・英検のスコアアップを狙うのではなく、語彙・リスニングの土台づくりの一環として位置づけ、文法学習や過去問演習など試験特化型の対策と組み合わせるのが現実的なアプローチだといえます。
日常英会話の学習への効果
日常英会話力という観点では、ゲーミング英会話は比較的相性が良いと考えられます。理由は次の3つです。
リアルタイムでのやり取りが発生する
ゲームの状況を説明したり、講師と作戦を相談したりする過程で、「今、伝えたいことを英語にする」という即興的なアウトプットの練習になります。
心理的ハードルが下がる
前述のReinders & Wattanaの研究が示すように、ゲームという共通の目的があることで、間違いを恐れずに発言しやすい環境が生まれます。
語彙が実生活の文脈と結びつきやすい
単語カードのような無機質な暗記ではなく、ゲーム内の出来事という具体的な文脈の中で単語や表現に触れるため、記憶に残りやすいとする指摘があります。
ただし、ゲーム内で使われる語彙・表現は日常生活やビジネスの場面で使うものと異なる場合もあるため、日常英会話全般の底上げを狙うなら、レッスン後の「振り返り・表現の一般化」がセットになっているサービスを選ぶことが重要です。
大人がゲーミング英会話を活用する際のポイント
目的を明確にする
資格試験対策なのか、雑談力の向上なのか、ビジネス英語なのかによって選ぶべきサービス・使い方が変わります。
振り返りの時間を活用する
レッスン後にゲーム内で使った表現を復習する時間を、自分の言葉で言い換える練習に充てると定着しやすくなります。
他の学習法と組み合わせる
語彙・リスニングの土台づくりとしてゲーミング英会話を使いつつ、文法や試験対策は別の教材で補完するのが効果的です。
参照元
Sylven, L. K., & Sundqvist, P. (2012). Gaming as extramural English L2 learning and L2 proficiency among young learners. ReCALL, 24(3), 302?321.
Puimege, E., & Peters, E.(引用元)Vocabulary learning strategies in extramural English gaming and their relationship with vocabulary knowledge.
Reinders, H., & Wattana, S. (2014). Can I say something? The effects of digital gameplay on willingness to communicate. Language Learning & Technology, 18(2), 101?123.

